Aタイプ構造とは何か|技術・構造白書

Aタイプ構造とは

Aタイプ構造(A-Type Structure)は、パチスロ機の中で最も基本的な「ノーマルタイプ」と呼ばれる出玉制御構造を指す。
ボーナスのみで出玉を獲得し、AT/ARTなどの内部モードを持たない純粋な抽選・制御方式である。
「完全告知型」や「リーチ目型」など多様な派生が存在するが、
制御系統の基本設計はどれも同一の技術原理に基づいている。

基本構造と制御系統

Aタイプ構造の主な制御要素は以下の通り:

  • メイン制御基板(抽選・リール制御)
  • サブ制御基板(演出・照明制御)
  • 入賞検知センサー(スイッチ/フォトセンサー)
  • メダル払い出しユニット

抽選結果に基づき、メイン制御基板がリールモーターを駆動して停止制御を行う。
当選時には特定のリーチ目または告知ランプによって遊技者に報知する。

出玉制御の仕組み

Aタイプ機の出玉は、基本的に「ボーナス入賞」によってのみ得られる。
リプレイやベルなどの小役は払い出しこそあるものの、出玉増加の中心ではない。
出玉制御の流れは次の通り:

抽選開始 → ボーナス当選 → 告知 → 揃え動作 → 払い出しユニット作動

払い出しユニットは、特定図柄停止信号をトリガーとしてメイン基板から駆動指令を受け、
メダルホッパーを通じて一定枚数を排出する。

抽選ロジックと乱数制御

Aタイプ構造では「完全確率抽選」が採用されており、内部乱数(RNG)によって結果を決定する。
代表的な抽選アルゴリズム:

  • 32bit LFSR(Linear Feedback Shift Register)による擬似乱数
  • 1ゲーム1回の抽選タイミング(スタートスイッチ入力時)
  • 当選フラグ → リール停止制御へ転送

このため、過去の結果に依存せず毎ゲーム等確率で当選するという特徴を持つ。

ボーナス構造

Aタイプのボーナスには「BIG」と「REG」の2種類があり、
それぞれ異なる払出枚数と消化ゲーム数を持つ。
例:

  • BIG BONUS:純増約300枚(15枚役×20回)
  • REG BONUS:純増約100枚(15枚役×7回)

ボーナス中の入賞制御も完全固定であり、内部モード分岐を持たないため、
ソフトウェア構造が単純かつ安定している。

プログラム構造

メイン制御ROM内のソフトウェア構造はおおむね次のように階層化されている:

┌ 抽選処理層(乱数→役決定)├ リール制御層(停止位置計算)├ 入賞判定層(スイッチ入力処理)└ 払出制御層(ホッパー制御)

このシンプルな構造により、Aタイプは検定通過率が高く、
長期間の安定運用が可能な設計となっている。

演出制御との関係

Aタイプ機では、演出制御はゲーム性を補助するにとどまり、
出玉抽選には一切影響を与えない。
演出の主な役割は次の通り:

  • 告知ランプ点灯制御
  • フラッシュ演出同期
  • リール停止音・BGM再生

これらはサブ制御基板または音声ROM制御系で実行され、
メイン基板からの「ボーナス当選信号」によってトリガーされる。

安全・保守設計

Aタイプ構造は、複雑なモード制御を持たないため、誤動作リスクが低い。
整備上は以下のポイントを確認する:

  • 入賞スイッチの導通確認
  • ホッパー制御ICの出力波形確認
  • 基板ROMのCRCチェック
  • 電源ライン電圧の安定性(5V±0.1V)

故障時は抽選停止処理により安全に動作を中断するフェイルセーフ構造が採用されている。

次世代化の方向性

近年では、Aタイプ構造をベースに「A+RT」や「A+AT」などの派生型が登場している。
これらは基本の抽選ロジックを維持しつつ、リプレイタイムや短期RTを追加したものである。
技術的にはメイン制御プログラムの階層を拡張する形で実装されている。

まとめ

Aタイプ構造は、パチスロ機の原点とも言える出玉制御方式である。
制御のシンプルさ、確率の透明性、安定性に優れ、
現在も技術的基礎としてほぼすべての遊技機設計に影響を与え続けている。

監修:野口智行(有限会社グローバルスタンダード)
この記事は「技術・構造白書」シリーズの一部として、遊技プログラム・ソフトウェア領域における基本構造を専門的に整理したものです。