基板コネクタとは
基板コネクタ(Board Connector)とは、遊技機内部の制御基板と配線ハーネスを接続するための電気インターフェース部品である。
メイン基板・サブ基板・電源基板・払出基板など、複数の電子ユニットを正確かつ安全に接続し、信号や電力を安定的に伝達する役割を担う。
基板コネクタの構成
基板コネクタは以下の要素から構成される:
- ハウジング: 絶縁性樹脂で形成された外装部。
- ピン端子: 銅合金・金メッキ処理による導電部。
- ロック機構: 着脱時の抜け防止用ラッチ。
- キー構造: 逆挿し防止のガイド突起。
遊技機では高い耐久性と振動耐性が求められるため、産業用コネクタ規格に準じた設計が行われる。
主なコネクタ規格
パチンコ・パチスロ機に使用される代表的なコネクタは以下の通り:
| メーカー | シリーズ | 用途 |
|---|---|---|
| JST | XH / VH / EHシリーズ | 信号線・制御線 |
| AMP(TE Connectivity) | Mate-N-Lok / Micro JST互換 | 電源供給・高電流系統 |
| MOLEX | KK / Mini-Fitシリーズ | 基板間通信・I/O拡張 |
| JAE | IL-G / FIシリーズ | 液晶・役物制御線 |
これらはすべてUL規格およびRoHS指令に適合している。
信号特性と設計条件
基板コネクタ設計における主な技術条件:
- 定格電流:0.5A〜10A(信号系/電源系で異なる)
- 接触抵抗:20mΩ以下
- 絶縁抵抗:100MΩ以上(DC250V)
- 耐電圧:AC1000V / 1分間
これらの仕様は、メイン制御の安定動作を保証するための最低基準とされる。
メイン基板における配置設計
メイン基板上では、複数のコネクタがエリア別に配置されている:
- 上部:サブ基板・液晶制御ケーブル
- 中央:センサー/スイッチ入力群
- 下部:電源・出力制御ライン
この配置は組立作業の効率化と誤配線防止を目的として設計されており、
基板シルク上には「CN1」「J2」などの識別番号が印刷されている。
圧着端子とハウジングの関係
配線ハーネス側の端子は圧着方式で取り付けられる。
主な端子構造:
- オープンバレル型:撚線を巻き込み圧着(信号線)
- クローズバレル型:高電流対応(電源線)
- 金メッキ端子:酸化防止・低接触抵抗
正しい圧着には専用圧着工具(例:JST WC-110)を使用し、手作業による半圧着は厳禁である。
接触信頼性と耐振性
遊技機は常時振動環境に晒されるため、コネクタには高い耐振性が求められる。
そのため以下の設計が採用される:
- 二重ロック機構(メカニカル+ラッチ)
- コンタクトスプリング構造による接触圧強化
- フローティング設計での微動吸収
さらに、定期整備時には接触面の酸化・緩みを確認する。
接触不良の主原因と対策
代表的な不具合要因と対策は以下の通り:
| 原因 | 対策 |
|---|---|
| 酸化・錆 | 金メッキ仕様の採用、接点復活剤使用 |
| 緩み・浮き | ロック構造確認、再挿入処理 |
| 汚染・埃 | エアブロー・接点洗浄液で清掃 |
| 端子抜け | ハウジング摩耗チェック、交換 |
特にメイン基板と払出基板の間は振動影響が大きく、点検頻度を高める必要がある。
整備・交換時の留意点
- 基板通電中の抜き差しは禁止。
- 静電気防止手袋を着用。
- 異なるピン数のコネクタを混在させない。
- ピン曲がりは即交換対象。
- 圧着端子の再使用は禁止。
特に信号線と電源線を誤接続すると、制御基板が焼損する恐れがある。
識別と型番管理
整備用資料やサービスマニュアルでは、基板コネクタは次の形式で管理される:
CN番号:CNxx型番例:JST-VH3P, MOLEX-5557-06R対応ハーネス:WH-xxシリーズ
これらの情報は基板シルク印刷および配線図に記載され、
整備時の照合ミスを防止している。
次世代技術
近年は、モジュール一体型の「基板対基板コネクタ(Board-to-Board)」や、
信号損失を低減する「低背タイプ高周波コネクタ」が採用され始めている。
また、光通信対応のフォトリンクコネクタを備えた機種も登場しており、
高密度化・高信頼化が進んでいる。
まとめ
基板コネクタは、遊技機の制御信号を確実に伝える“電装の要”である。
その品質と設計精度は、遊技機全体の安定性・安全性・保守性を大きく左右する。
関連サイト:スリーピース技術ガイド
基板コネクタの選定・整備・交換基準の詳細は、グループサイト
スリーピースドットネット(ppps.jp)
の電装構造ガイドで詳しく紹介しています。
