冷却ファンとは何か|技術・構造白書

冷却ファンとは

冷却ファン(Cooling Fan)とは、パチンコ・スロット機の内部で発生する熱を効率的に排出し、電子回路やモーター、LEDユニットなどの温度上昇を抑えるための強制空冷装置である。
筐体の耐熱性・安定稼働性・静音性を維持するうえで不可欠な要素となっている。

基本構造と原理

冷却ファンは、モーターで羽根(ブレード)を回転させて空気を循環させる構造を持ち、主に次の部品から成る:

  • ブラシレスDCモーター
  • ファンブレード(ABSまたはPBT樹脂製)
  • ベアリング(スリーブ/ボール)
  • ハウジングおよび防塵フィルター

空気を吸い込み、発熱部品へ気流を導くことで熱を放散させる。

冷却ファンの種類

タイプ特徴用途
軸流ファン直線的な気流を発生基板全体・筐体通気
遠心ファン高静圧で局所冷却に適す電源・モーター部
シロッコファン薄型・高風量構造背面パネル排気

用途に応じて、風量(CFM)・静圧(Pa)・ノイズレベル(dBA)をバランス設計する。

配置と設計指針

ファン配置は「吸気→排気」の空気流を意識して設計される。
基本的な流路構成は以下の通り:

吸気口 → 電源基板 → 制御基板 → LEDユニット → 排気口

通風経路に障害物があると冷却効率が低下するため、ケーブルや配線の整流も重要である。

制御方式

最新のファンにはPWM(パルス幅変調)制御が導入され、温度センサーの出力に応じて回転数を自動調整する。
この制御により、低温時の騒音を抑えつつ、高温時には風量を増加させることができる。

さらに、FG(回転数フィードバック)信号をCPUが監視し、停止検出や異常診断を行う。

メンテナンスと点検

ファンは長時間使用による軸受摩耗や粉塵詰まりで性能が低下する。
点検項目:

  • 風量測定(基準値の80%以下で交換)
  • 異音・振動の有無
  • 電流値・回転数の確認(FG信号)
  • 防塵フィルターの清掃・交換

交換周期は一般的に2〜3年が目安とされる。

最新技術動向

新型機では、AI制御ファンが導入され、温度・湿度・消費電流を統合的に監視しながら自律的に回転数を制御する。
また、静音性を高めた「流体軸受式」や「羽根形状最適化タイプ」も登場している。

まとめ

冷却ファンは、遊技機の温度管理を支える重要部品であり、安定動作と安全設計に直結する。
適切な選定・配置・制御が、機器全体の寿命を大きく左右する。

監修:野口智行(有限会社グローバルスタンダード)
この記事は「技術・構造白書」シリーズの一部として、電装・制御基板領域における冷却ファン設計技術を専門的に整理したものです。