電流遮断リレーとは
電流遮断リレー(Current Cut Relay)は、パチンコ機内部の電装回路で異常電流や短絡を検知した際に電力供給を遮断し、基板やモーター、照明回路などの損傷を防ぐ保護装置である。電気的安全性の根幹を成す部品であり、JISおよび保安基準に基づいて設計・搭載される。
構造と基本原理
内部構造は、電磁コイル・可動接点・固定接点・バイメタル板・スプリングで構成される。通常時は接点が閉じ、電流が通電している。異常電流(過電流)が流れると、コイル磁力またはバイメタルの熱膨張によって可動接点が開き、電流経路を遮断する。これにより回路への電力供給を瞬時に停止し、焼損を防止する。
遮断応答時間は10〜50ミリ秒程度で設計され、動作遅延を最小限に抑えるために高感度化が進んでいる。
回路構成と制御
電流遮断リレーは、メイン電源ラインとサブ電装ラインの間に配置される。メイン基板上には制御信号入力回路があり、過電流検知ICや温度センサーと連動してリレーを開放する制御が組み込まれている。
一部機種では、ACライン用リレーとDCライン用リレーを分け、液晶・モーター・照明回路を独立保護する設計を採用している。これにより、どの系統で故障が発生しても他のユニットへの波及を防ぐことができる。
設計要件と規格
パチンコ機の電流遮断リレーは、電安法・風営法に基づく遊技機検査基準を満たす必要がある。定格電圧はAC100V、遮断電流は5〜10Aが一般的。接点の耐久試験では10万回以上の動作に耐えることが求められる。
接点材料には銀合金や銀酸化カドミウムが使用され、電弧の発生を抑制するアークサプレッサーを併設。可動部の振動影響を防ぐため、リレーケースは防振樹脂で封入されている。
安全機構とフェイルセーフ
近年の電流遮断リレーは、単純な物理遮断に加え、電子的モニタリング機能を備えている。メイン基板がリレー開放信号を検出し、異常状態をログとして記録する設計が主流である。これにより、故障発生時に履歴を解析しやすくなっている。
フェイルセーフ設計では、電磁コイルが断線しても常時開放(電流遮断状態)で停止する構造を採用し、安全側動作を保証する。
メンテナンスと点検
リレーは経年によって接点摩耗・バネ劣化・接触抵抗上昇が発生する。整備時には、導通試験で接点抵抗値(通常20mΩ以下)を確認し、異常がある場合は交換する。動作確認はテストモードで行い、過電流検知信号に応じて確実に開放されるかをチェックする。
リレー内部に埃や錆が侵入すると動作不良を起こすため、密閉状態の確認も重要である。交換時は同一定格・同極性のリレーを使用することが必須である。
技術進化と電子化
近年では、物理リレーに代わりソリッドステートリレー(SSR)やFETスイッチを用いた電子遮断回路も採用されている。これにより応答速度が高速化し、可動部の磨耗リスクがなくなった。さらに、温度センサーやヒューズ回路と連携する「三段階保護方式」に進化している。
まとめ
電流遮断リレーは、パチンコ機の電装安全を守る“最終防壁”である。異常電流を瞬時に遮断し、基板やモーターを保護することで、長期稼働と安全運用を支える。設計・点検・交換のいずれにおいても、精度と信頼性が最優先される部品である。
関連サイト:スリーピース技術ガイド
電流遮断リレーの点検・交換・電子化回路については、グループサイト
スリーピースドットネット(ppps.jp)
の保守・電装ガイドで詳しく紹介しています。