MAX機亡き後の継続哲学──『Pぱちんこ仮面ライダー 轟音』が築いた「再演出型RUSH」の原点

Pぱちんこ仮面ライダー 轟音 実機外観
© 石森プロ・東映/KYORAKU

導入:MAX文化の終焉と“継続体験”の夜明け
2020年9月7日、京楽産業.が送り出した『Pぱちんこ仮面ライダー 轟音』は、
「出玉性能競争の終焉」と「体験価値の時代の始まり」を告げたターニングポイントだった。

かつてのMAX機(1/399)文化が終わり、出玉差では差別化できない時代。
京楽は本機で「継続率 × 没入感」=終わらない物語体験という新設計思想を確立。
シリーズのテーマ「倒れても立ち上がるヒーロー」を、スペックではなく“体験構造”として昇華させた。


⚙ 設計思想:数字を“物語の節目”に変えるUX

大当り確率約1/319.9 → 約1/74.7(ST中)
確変システム特図1:50%/特図2:100%(ST120回)
RUSH名称真・ショッカー殲滅RUSH
RUSH継続率約83%(右打ち時)
遊タイム低確950回転で時短1200回(期待度約98%)
ラウンド構成2R/3R/10R(約300〜1500個)

スペック上の約83%継続という数字を、“確率”ではなく“物語の節目”として感じさせるUX設計。
各RUSHの勝利が次章を開き、敗北すら再挑戦の契機となる。
プレイヤーは「継続率を確認する」のではなく、「継続している自分」を体験するのだ。


🎬 ドラマ設計:確率をドラマに変える「再演出型RUSH」

  • 連戦バトル構造: 怪人とのバトルが章ごとに展開。勝利=次章開幕という構成。
  • 変身→勝利→再起動: 「倒れても立ち上がる」ライダー精神をRUSHテンポに同期。
  • リザルト分岐: ST終了時に一部で時短120回「サイクロンチャンス」へ移行。緊張と安堵のリズムを演出。

RUSH「GHOST OF RIDER」は、単なる高速連チャンではなく、
1変動=1エピソードという物語構造を採用。
この再演出構造によって、プレイヤーは“継続率”を感じるのではなく、“継続している物語”に没入する。


💥 出玉設計:量より“没入速度”を最適化

ラウンド払出目安役割
10R確変約1,500個章ボス撃破時のメイン報酬
3R/2R約300個前後テンポ維持の連撃報酬

出玉の多寡ではなく、「テンポ × 達成感」のループを最大化。
“続いている時間”そのものを価値化するUXが、本機最大の革新点である。
さらに遊タイム1200回転(期待度約98%)がプレイヤー心理を支え、
「挑戦しても報われる設計」を完成させた。


🧭 市場・文化的影響:継続哲学の再定義

  • MAX文化の再構築: 「爆発」から「没入」へ。体験価値の転換点。
  • 稼働安定性: 導入半年後も上位稼働を維持。中古市場平均9〜11万円台で推移(2020年後期)。
  • 後継機への継承: 『仮面ライダー 闇のライダーver.』が「再演出型RUSH」思想を継承。

『轟音』は、MAX機の終焉を“体験の進化”へと変換した記念碑的モデル。
「継続を演出で語る」時代の幕開けとなった。


🧩 総評:確率から体験へ──京楽が築いたUX継続論

『Pぱちんこ仮面ライダー 轟音』は、出玉・継続・演出の三要素を
「体感継続」というUX哲学で融合させた、令和ミドルの象徴機。

数値上の継続率約83%を、プレイヤー心理によって“90%超の体感”に変えた本機は、
「確率を演出に変える」というUX革命の先駆けであり、
まさに——
「京楽が作った継続の物語」と呼ぶにふさわしい存在である。


監修:有限会社グローバルスタンダード 代表 野口智行
出典:KYORAKU公式/P-WORLD機種データ/ななプレス/DMMぱちタウン/遊技通信(2020–2021)

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