払出基板とは何か|技術・構造白書

払出基板とは

払出基板(Payout Board)は、遊技機内部で賞球・メダルの払い出しを制御する専用回路基板である。センサー入力・モーター駆動・カウント処理を統合的に制御し、ホッパーや賞球ユニットの動作を管理する中枢機能を担う。

パチンコでは賞球ユニット、パチスロではメダルホッパーやアウトカウント機構に接続される。誤動作や出玉制御の異常は、この基板の不良が主因であることが多い。

構成と主要回路

払出基板は、以下の要素で構成されている:

  • 電源回路(DC12V/24V入力)
  • センサー入力回路(賞球検知・ホールセンサー)
  • モーター駆動回路(トランジスタまたはMOSFET制御)
  • 出玉カウンタ制御回路
  • 通信インターフェース(メイン基板接続)
  • 保護回路(ヒューズ・ダイオード・リレー)

これらが一体化され、出玉数・動作時間・検知信号をリアルタイムに管理する。

動作原理

払出基板は、メイン基板から送られる「払出開始指令」に基づいてホッパーモーターを駆動する。ホールセンサーやフォトセンサーで通過球・メダルをカウントし、指定数に達すると出力を停止する。

制御はおおむね以下のフローで行われる:

① メイン基板から指令信号受信  ② 駆動出力ON(モーター起動)  ③ センサー信号入力でカウント加算  ④ 規定数に達するとモーター出力OFF  ⑤ 結果をメイン基板へ返送

このフィードバック制御により、過払いや誤作動を防止している。

回路設計と信号制御

払出制御では、モーター駆動にリレーではなくMOSFETが多用される。これにより応答速度が速く、耐久性も向上する。また、センサー入力はフォトカプラ絶縁され、ノイズによる誤カウントを防止している。

通信はシリアル(UART)または並列信号で行われ、メイン基板との同期性を保つ。通信エラー時には自動リトライ機構を備える設計が一般的である。

安全・保護機構

過電流やショートに備え、払出基板には以下の安全設計が組み込まれている:

  • リセットヒューズ(ポリスイッチ)による過電流遮断
  • 逆接防止ダイオード
  • スパイクノイズ吸収用コンデンサ
  • 温度上昇センサー(異常発熱時に遮断)

これにより、長時間稼働においても安全性と安定性を維持できる。

故障症状と診断

払出基板の代表的な故障は以下の通り:

  • モーターが回転しない(ドライバ素子破損)
  • 出玉カウントがずれる(センサー入力不良)
  • 過剰払出または停止しない(制御IC異常)
  • LEDが点灯しない(電源ライン断)

診断時は、電源入力・出力端子の電圧測定、およびホールセンサー信号の波形確認を行う。出玉カウント異常が頻発する場合、センサーではなく払出基板側のタイミング処理が原因であるケースも多い。

リユース・再整備時の注意

中古機整備においては、払出基板の電解コンデンサ劣化が最も多いトラブル要因である。長期使用により容量抜けや液漏れが発生し、電圧リップルが増大して誤動作を引き起こす。

整備時には以下の作業を推奨する:

  • 主要コンデンサの全交換(耐圧25V以上の低ESRタイプ)
  • MOSFETドライバのリーク電流測定
  • はんだクラック再補修

技術進化と次世代設計

近年の機種では、払出基板がメイン制御基板に統合されるケースも増えている。これにより配線の簡略化と通信遅延の削減が実現された。一方、独立型払出基板ではマイコン搭載化が進み、自己診断機能やログ記録を行うモデルも登場している。

まとめ

払出基板は、遊技機の「出玉制御」を正確に担う中核基板である。センサー・モーター・通信の3要素が正常に機能して初めて正確な払出が実現される。経年劣化が及ぼす影響は大きく、定期的な点検と部品交換が不可欠である。

監修:野口智行(有限会社グローバルスタンダード)
この記事は「技術・構造白書」シリーズの一部として、電装・制御基板領域における払出制御技術を専門的に整理したものです。