電源ヒューズ規格とは何か|技術・構造白書

電源ヒューズ規格とは

電源ヒューズ規格(Power Fuse Specification)とは、パチンコ・スロット機内部で電源回路を保護するために用いられるヒューズの種類・定格・安全基準を定めた規格群を指す。
過電流・短絡・過熱による回路損傷を防止し、安全性と耐久性を両立するための要素である。

ヒューズの基本構造

ヒューズは導体線(ヒューズエレメント)が所定電流以上で溶断する構造を持ち、主に以下の部材で構成される:

  • ヒューズエレメント(錫・銀合金線)
  • ガラスまたはセラミック管
  • 金属端子キャップ
  • 充填剤(耐アーク砂・シリカ)

これにより、異常電流時に安全に回路を遮断し、火災や基板破損を防止する。

使用箇所と役割

  • 主電源入力ライン(AC100V/DC24V)保護
  • 電源基板・トランス2次側の保護
  • ホッパー・役物駆動モーターの個別保護
  • 表示LED・通信基板など低電圧回路の保護

用途ごとに定格電流・溶断時間・形状が異なり、回路特性に合わせて選定される。

主な規格分類

規格名電圧範囲形状特長
JIS C 6575AC125〜250V管ヒューズ国内一般規格
UL 248AC125〜600Vガラス/セラミック北米安全規格
IEC 60127AC250V以下ミニチュア型国際規格(欧州標準)

遊技機ではUL認証またはIEC準拠のものが多く採用される。

定格と選定基準

ヒューズの選定は以下のパラメータを基に行う:

  • 定格電流:通常電流の150〜200%で溶断
  • 定格電圧:使用電圧の1.2倍以上
  • 遮断容量:最大短絡電流に対応(例:100A)
  • 時間特性:速断型/中速型/遅延型

モーター駆動系には遅延型(T型)、電子制御回路には速断型(F型)が適用される。

ヒューズホルダーと安全設計

ヒューズは交換容易性と安全性を考慮し、ホルダーまたは基板直付けで実装される。
安全設計上のポイント:

  • 感電防止カバー付きホルダー採用
  • ラベル明記(電流・電圧・規格)
  • 交換時は電源OFFを必須化
  • 異定格ヒューズ使用防止の形状キー

これにより、整備時の誤挿入やショート事故を防止する。

異常検出と故障時対応

ヒューズが溶断した場合、制御基板のLEDやディスプレイにエラーコードが表示される(例:E-F1〜F3)。
溶断原因の多くはショート・電流過負荷・トランス劣化であるため、交換前に必ず回路点検を行う。

新品交換後、再溶断する場合は素子短絡の可能性が高く、電源ユニットの分解検査が必要。

最新動向

新世代筐体では、スマートヒューズ(電子回路内蔵タイプ)が採用されつつあり、
過電流を自動検出・遮断・リセット可能な自己復帰型(ポリスイッチ)へ移行が進んでいる。
また、通信ログを通じてヒューズ動作履歴を監視できる「IoT電源管理」も試験導入されている。

まとめ

電源ヒューズ規格は、遊技機電装系の安全を保証する基本設計指標である。
適切な選定と保守を行うことで、火災防止と安定稼働を長期的に維持できる。

監修:野口智行(有限会社グローバルスタンダード)
この記事は「技術・構造白書」シリーズの一部として、電装・制御基板領域における電源保護設計技術を専門的に整理したものです。