電源ラインとは
電源ライン(Power Line)は、遊技機内の基板・モーター・センサー・照明など各種ユニットへ電力を供給する配線経路である。安定した電圧供給とノイズ遮断が不可欠であり、電装系の信頼性を左右する基幹インフラに相当する。
一般的にDC12VおよびDC24V系統が用いられ、電源トランスやスイッチング電源ユニットから各回路へ分岐供給される。
構成と電圧区分
遊技機の電源ラインは以下の系統に分類される:
- AC入力ライン: 商用100V(50/60Hz)からトランスへ供給。
- DC24Vライン: ソレノイド・モーター・リレーなど駆動系へ供給。
- DC12Vライン: センサー・ランプ・制御基板など制御系に供給。
- DC5V/3.3Vライン: マイコンやICチップなど低電圧回路用。
電源トランスまたはスイッチング電源で整流・安定化された電流が、ヒューズ・コネクタ・ハーネスを介して各ユニットに分配される。
電流容量と線材仕様
電源ラインの設計では、電流容量と電圧降下のバランスが重要である。線材の選定基準は次の通り:
- 許容電流:1Aあたり0.5mm²以上の断面積を確保
- 導線材質:スズメッキ軟銅線(JIS C3306相当)
- 被覆:耐熱PVCまたは耐油クロロプレン(定格80〜105℃)
特にソレノイドや発射ユニットなど高負荷系統では、電圧降下が1Vを超えないよう配線長を短く、線径を太く設計する。
安全・保護設計
電源ラインには以下の保護要素が組み込まれている:
- ヒューズまたはポリスイッチによる過電流遮断
- 逆接続防止ダイオード
- サージ吸収素子(バリスタまたはTVSダイオード)
- ラインノイズフィルタ(コモンモードチョーク+コンデンサ)
これらは電装系の焼損やノイズ障害を防ぐための必須構成であり、設計段階で系統ごとに最適化されている。
ノイズ対策とグランド設計
電源ラインの安定性には、アース(GND)設計が大きく関係する。以下の方式が採用される:
- スターグランド方式: 各回路のGNDを一点集中で接地し、電位差を防ぐ。
- シールドライン設計: 信号ラインと電源ラインを物理的に分離。
- フェライトビーズ: 高周波ノイズの吸収。
照明やモーターのノイズが音声・映像系に干渉しないよう、制御・駆動ラインを別経路で配線することが望ましい。
電源ラインの点検項目
定期整備時には以下の点を確認する:
- ハーネスの被覆損傷・断線
- コネクタの焼け・変色
- 電圧測定(負荷時で規定値±5%以内)
- 電流測定(基板・ソレノイドの消費電流)
電圧降下が大きい場合、配線抵抗や接触不良が発生している可能性が高い。抵抗測定で0.1Ω以上ある場合は要交換である。
リユース・再整備時の注意
中古機整備時には、電源ラインの「圧着端子の劣化」「酸化被膜」「中間コネクタの緩み」が主要なトラブル源となる。とくに長期使用機では、電流負荷の繰り返しによる熱収縮で端子が緩むことがある。
再整備時は以下を徹底する:
- 主要ラインの端子再圧着
- 接触面クリーニングと導通確認
- 電圧波形(リップル・サージ)測定
次世代電源設計
近年の遊技機では、電力効率と発熱低減を目的としてスイッチング電源の高効率化が進む。さらに、DC-DCコンバータによる局所電源分配やスマートモニタリングICが導入され、電流監視や異常検知を自動化している。
これにより、電装トラブルの早期検出と省エネルギー化が同時に実現している。
まとめ
電源ラインは遊技機全体の「血流」にあたる基礎構造であり、安定性と安全性の確保が最重要である。電圧の健全性とノイズ対策を継続的に管理することが、長期稼働と信頼性維持の鍵となる。
関連サイト:スリーピース技術ガイド
電源ラインの設計・測定・整備手法の詳細は、グループサイト
スリーピースドットネット(ppps.jp)
の電源・配線ガイドで詳しく紹介しています。