音声ROMとは
音声ROM(Sound ROM)は、パチンコ・パチスロ機における音声データ(BGM・ボイス・効果音)を格納する不揮発性メモリである。
メイン制御基板またはサブサウンド基板に実装され、制御ICからの指令により音声データを読み出して再生する。
ROMタイプのため電源断でもデータが保持され、長期間の安定再生が可能である。
構造と実装形式
音声ROMには、主に次の種類が使用されている:
- マスクROM: 製造時にデータを書き込む固定型。耐久性・信頼性が高い。
- Flash ROM: 後から書き換え可能。試作・調整用に採用される。
- EPROM/EEPROM: 小容量用途(効果音・補助音声)。
容量は64Mbit〜512Mbitが主流で、機種によっては1Gbit以上のデータを複数チップで構成する場合もある。
データ形式と構成
音声ROM内には、複数の音声素材が圧縮形式で格納されている。代表的なフォーマット:
- ADPCM(Adaptive Differential PCM)
- PCM16bit(リニア波形)
- MP2/MP3(高圧縮BGM用途)
それぞれにヘッダ情報(再生アドレス・長さ・ループポイント)が付加され、
音声制御ICが指定アドレスを順次読み出す構造になっている。
音声制御との連携
メイン制御基板から音声制御ICへ送られるコマンド例:
CMD_PLAY_VOICE(ID)CMD_STOP_SOUND()CMD_LOOP_BGM(ID)CMD_VOLUME_SET(V)
音声ROMはこの指令に基づき、内部のアドレスマップから該当データを選択し、
DAC(デジタル・アナログ変換器)経由で出力する。
BGM再生時は、複数トラックを同時に再生するミキシング機能(2〜8ch)が用いられる。
同期制御と演出連動
パチンコ機の音声演出は、液晶映像や役物動作と同期して再生される。
そのため、音声ROM再生制御は「フレーム同期信号」または「イベントトリガー信号」と連動して動作する。
例:リーチ演出開始 → 音声ROMトラック呼び出し → 液晶アニメーション同期再生 → 終了時BGMクロスフェード。
電装構造とノイズ対策
音声ROMのデジタル信号は、アナログ出力ラインにノイズを与える可能性があるため、
基板レイアウト上ではアナログ領域とデジタル領域を絶縁的に分離する。
また、GNDラインはスター接続(一点集中方式)で設計され、クロストークを防止する。
ノイズ除去にはフェライトビーズ・デカップリングコンデンサ・シールド線が併用される。
故障・診断・整備
音声異常が発生した場合、主な原因は以下の通り:
- ROMデータ破損(書き込み時エラー)
- ROMソケットの接触不良
- 音声制御ICとの通信エラー(SPI不良)
- DAC出力段の断線・ノイズ混入
テストモードには「SOUND TEST」機能が搭載されており、
音声IDを順次再生して動作確認が可能である。
リユース・再整備時の注意
中古再整備時には、Flash ROMの書き換え回数制限(約10万回)や、
ROMソケットの酸化・ピン折れに注意が必要である。
マスクROMの場合は交換が困難なため、
不具合があればサウンド基板全体の交換を推奨する。
次世代技術
近年は、音声ROMを廃止してSDメモリやNANDストレージ上に音声データを配置する方式も増加している。
これにより、高音質化(48kHz/24bit)や多言語対応が容易になっている。
さらにAIボイス合成を組み込んだ「動的音声生成システム」も一部機種で試験導入されている。
まとめ
音声ROMは、遊技機の「音の品質」と「演出の臨場感」を支える重要部品である。
信号経路の設計・同期精度・データ品質のいずれもが、
最終的な遊技体験の印象に直結する。
関連サイト:スリーピース技術ガイド
音声ROMの構造・再生制御・メンテナンス方法の詳細は、グループサイト
スリーピースドットネット(ppps.jp)
の音響技術ガイドで詳しく紹介しています。