スピーカー位相とは
スピーカー位相(Speaker Phase)とは、パチンコ・スロット機に搭載される複数スピーカーの音波位相(波のタイミング)を統一・制御することで、音の干渉や定位のずれを防ぐための音響設計技術である。
正相・逆相の関係を適切に設定することにより、迫力と明瞭度を両立した演出音を実現する。
スピーカー配置と位相関係
遊技機では、筐体内部や盤面裏などに複数のスピーカーが配置される。
代表的な構成:
- メインスピーカー(左右) … BGM・効果音出力
- サブスピーカー(上部/背面) … ボイス・リーチ音
- ウーファー(下部) … 低音・衝撃演出
これらのスピーカーは電気信号の極性を統一しないと、逆相干渉により音が打ち消し合う現象が発生する。
正相・逆相の仕組み
スピーカーはコイルに流れる電流の方向によって振動板が前後に動く。
正相の場合、全スピーカーが同方向に振動して音圧が加算されるが、逆相接続になると一部が逆方向に動き、低音域で音圧が減衰する。
| 位相状態 | 特徴 |
|---|---|
| 正相(in-phase) | 音圧が安定し、定位が明確。 |
| 逆相(out-of-phase) | 低音が薄く、中心定位がぼやける。 |
測定と検出方法
スピーカー位相の確認には以下の手法が用いられる:
- 位相チェッカー(パルス信号照合方式)
- 周波数スイープ測定(20Hz〜1kHz間の反転点解析)
- マイクロホン+FFT解析(波形比較)
- ポラリティテスター(LED表示による極性確認)
工場出荷検査では全スピーカーが正相接続であることを確認する。
位相ズレの影響
| ズレ範囲 | 現象 |
|---|---|
| 0〜30° | 音質にほぼ影響なし |
| 30〜90° | 定位のずれ・高音域の干渉 |
| 90〜180° | 低音減衰・音像の消失 |
位相ズレは特に低周波数帯域で顕著に影響し、演出音の迫力を大きく損なう。
補正と設計技術
位相ズレを防ぐために、以下の設計手法が採用されている:
- ケーブル極性マークの統一(赤=+、黒=−)
- 基板コネクタ極性の物理キー化
- DSPによるデジタル位相補正(全帯域/帯域別)
- 筐体内部の音響シミュレーションによる波面整合
DSP制御では遅延時間(約0.02〜0.2ms)を補正して波形整合を行う。
最新技術動向
最新の遊技機では、AI解析により筐体形状・材質に応じた位相補正を自動で行う「アクティブフェーズコントロール」が導入されている。
また、立体音響化のために一部チャンネルを意図的に逆相化する「仮想空間定位演出」も研究段階にある。
まとめ
スピーカー位相制御は、遊技機の音響品質を左右する要素の一つである。
正確な極性設計と補正処理により、立体感・迫力・明瞭度の高い演出音を実現できる。
関連サイト:スリーピース技術ガイド
スピーカー位相補正・音響測定・AI制御技術の詳細は、グループサイト
スリーピースドットネット(ppps.jp)
の音響制御ガイドで紹介しています。