ステップモーターとは
ステップモーター(Step Motor)は、電気信号のパルス入力に応じて一定角度ずつ回転するアクチュエータである。
パチンコ機やパチスロ機では、役物制御や液晶駆動補助、リール・回転体・表示機構など、精密な角度制御を要する部分に使用されている。
特に「回転体ユニット」や「ターゲットギミック」など、停止位置が演出の要となる箇所において不可欠な要素である。
基本構造
ステップモーターは、以下の主要部品で構成される:
- ローター(永久磁石)
- ステーター(電磁コイル)
- ドライバIC(励磁制御)
- エンコーダまたは原点センサー(位置検出)
ローターが磁界変化により一定角度ごとに回転し、入力パルス数によって回転量が決定する。
一般的な1ステップ角は1.8°または0.9°であり、細分化駆動(マイクロステップ)により滑らかな回転を実現する。
駆動方式
遊技機で採用されるステップモーターの駆動方式は次の3種が主流である:
- フルステップ駆動: 各相を順に励磁。高速回転向き。
- ハーフステップ駆動: 中間励磁で振動低減。
- マイクロステップ駆動: 正弦波電流制御で滑らかに駆動。
回転体ユニットではマイクロステップ方式が多く、静音性と停止精度を両立している。
制御信号とドライバ構成
ステップモーターは、制御基板からのパルス信号(PULSE)と方向信号(DIR)で駆動される。
基本的な制御ブロックは以下のように構成される:
[制御CPU] → [パルス生成回路] → [ドライバIC] → [モーター]
ドライバIC(例:A4988, DRV8825など)は、各相の電流を制御してトルクと速度を最適化する。
また、モーターの負荷や温度を監視する保護回路も組み込まれている。
位置検出とフィードバック制御
パチンコ機では、ステップモーターの回転位置をセンサーで検出する「原点復帰(Homing)」処理が行われる。
代表的な検出方式:
- フォトセンサー方式(遮光スリット検出)
- ホールIC方式(磁極検出)
- メカニカルスイッチ方式(押下検出)
これにより、電源投入時やリセット時に基準位置を補正し、
回転体やリールの同期精度を常に一定に保つ。
電源・電流制御
一般的な定格は5〜24V、駆動電流0.3〜1.2A。
制御基板上でPWM(パルス幅変調)制御が行われ、電流を細かく調整する。
負荷トルクが上昇した場合には電流増幅モードに切り替わり、モーター停止を防止する機能を備える。
ノイズと誤動作対策
ステップモーターは電磁ノイズを発生しやすいため、周囲の制御基板に悪影響を与える可能性がある。
そのため次のような設計対策が施される:
- モーターラインにフェライトコアを挿入
- ドライバ電源ラインにスナバ回路を配置
- シャーシ接地(FG)でノイズシールドを確保
また、停止時の残留トルク制御(Hold電流)も適切に設定し、発熱や振動を防ぐ。
整備と交換の基準
ステップモーターの寿命はおおむね20,000〜30,000時間とされる。
以下の症状が見られた場合は交換を推奨する:
- 回転ムラ・周期的な異音
- 過電流検知の頻発
- 原点復帰のズレ(位置誤差)
交換時は極性・ピッチ・カップリング形状を一致させ、トルク特性を確認する。
次世代技術動向
最新の遊技機では、ステップモーターをブラシレスサーボモーターで置き換える動きも進んでいる。
高応答・低発熱のため、長時間稼働における安定性が向上している。
また、AI制御によるトルク自動補正アルゴリズムも一部で実装されつつある。
まとめ
ステップモーターは、遊技機における「精密位置制御の心臓部」であり、
演出の正確性と耐久性を両立させるための要となるデバイスである。
正確なキャリブレーションと電流制御が、信頼性維持の鍵を握る。
関連サイト:スリーピース技術ガイド
ステップモーターの構造・駆動方式・制御チューニングの詳細は、グループサイト
スリーピースドットネット(ppps.jp)
のモーター制御技術ガイドで詳しく紹介しています。