耐熱設計とは何か|技術・構造白書

耐熱設計とは

耐熱設計(Thermal Resistance Design)とは、パチンコ・スロット機内部で発生する熱を安全かつ効率的に処理し、電子部品や筐体素材の劣化を防ぐための設計手法を指す。
電源トランス・LED・モーター・制御ICなどの発熱源に対して、放熱経路を最適化することが目的である。

耐熱設計の目的

主な目的は以下の通りである:

  • 高温による部品劣化・誤動作の防止
  • 温度分布の均一化による安定動作
  • 内部温度上昇による材料変形・変色の抑制
  • 安全規格(UL・JIS・IEC)の温度条件適合

特に、長時間稼働するホール環境では放熱性能が信頼性の鍵を握る。

発熱要因と解析

主要な発熱源は以下の通り:

  • 電源トランス・整流回路(ジュール熱)
  • LEDバックライト・駆動IC(輻射熱)
  • 役物モーター・ソレノイド(機械損失熱)
  • CPU・電源IC(スイッチングロス)

これらをサーモグラフィーや熱電対で測定し、熱分布マップを作成して解析を行う。

熱設計パラメータ

要素代表値備考
許容基板温度85℃以下FR-4基板の場合
モーター表面温度70℃以下絶縁クラスB基準
LED接合温度100℃以下輝度・寿命に影響
筐体内部平均温度45℃以下熱拡散の目安

これらの値を超えると劣化速度が指数的に上昇するため、熱伝導経路と放熱面積の確保が重要となる。

放熱技術と材料

耐熱設計で使用される主な技術:

  • アルミヒートシンク(放熱フィン構造)
  • サーマルパッド/グリスによる接触抵抗低減
  • 筐体放熱構造(アルミ合金・通気スリット)
  • 熱伝導樹脂基板(アルミコアPCB)
  • 自然対流+強制空冷ファンの併用

これらを組み合わせることで、熱抵抗(θja)を低減し、安定した熱平衡を維持する。

熱シミュレーション

近年ではCFD(数値流体解析)を用いたシミュレーション設計が一般化しており、
実機試作前に空気流動・熱伝達・温度分布を予測できる。
この解析により、通気孔配置やファン風量の最適化が可能となる。

安全基準と認証

耐熱設計に関する主要規格:

  • JIS C 60695(発熱試験法)
  • IEC 60950(IT機器安全規格)
  • UL94(樹脂難燃性分類)
  • PSE法・電安法対応基準

遊技機では、筐体外装の表面温度が45℃以下であることが安全上の目安とされる。

最新技術動向

最新機種では、温度センサーICとファン制御ICを連携させた「スマート熱制御システム」が採用されている。
さらに、熱情報を制御基板からクラウド監視し、異常温度を検知すると自動停止する安全制御も実装されている。

まとめ

耐熱設計は、電子機器の寿命と安全性を左右する最重要設計要素である。
物理・電気・材料の各分野を統合した熱マネジメントにより、遊技機の長期安定稼働が実現されている。

監修:野口智行(有限会社グローバルスタンダード)
この記事は「技術・構造白書」シリーズの一部として、電装・制御基板領域における耐熱設計技術を専門的に整理したものです。