導電体パネルとは何か|技術・構造白書

導電体パネルとは

導電体パネル(Conductive Panel)とは、パチンコ・スロット機において静電気の放電・電磁シールド・接地経路の確保を目的として設けられる導電性構造体である。
遊技盤や筐体内部に発生する電位差を制御し、電子部品の誤作動や通信ノイズを防止するための重要な電装要素である。

構造と材質

導電体パネルは、基材となる金属または導電性樹脂に導電コーティングを施した構造で、主に以下の素材が使用される:

  • アルミ板(軽量・高導電率・耐食性)
  • 銅板または銅メッシュ(高い電磁遮蔽効果)
  • 導電性ABS樹脂(射出成形対応・軽量)
  • ステンレス板(強度重視・防錆性)

金属と樹脂のハイブリッド構造も増えており、軽量化と導電性能の両立が図られている。

機能と用途

  • 基板や電源ユニットからのノイズ放射抑制(EMI対策)
  • タッチパネル・ボタンの静電気放電経路の確保
  • アースラインの分岐点・接地強化
  • 液晶ユニット裏面の電磁遮蔽

特に液晶表示部や制御基板周辺では、導電体パネルが「ファラデーケージ」的役割を果たす。

接地構造と電気特性

導電体パネルは筐体のアースポイントにボルト接続され、低抵抗経路で電位差を吸収する。
一般的な接地抵抗値は1Ω以下、表面抵抗率は103〜105Ω/□が目安とされる。
パネル間の電位差を最小化するため、接続部には導電グリスやメッシュシートが併用される。

設計上の留意点

導電体パネル設計では、以下の要素が重要となる:

  • 接触抵抗の低減(酸化皮膜除去・ワッシャ使用)
  • ノイズ経路の最短化(アースループ防止)
  • 高周波遮蔽性能の均一化
  • 放熱設計との両立(熱伝導経路の確保)

これらを適切に設計することで、制御信号の安定性とEMC規格への適合が保証される。

保守と検査方法

導電体パネルの劣化は目視では分かりにくいため、定期的に導通抵抗を測定する。
主な点検項目は以下の通り:

  • アース線接続部の緩み・腐食
  • パネル表面の絶縁化(汚れ・塗膜厚増加)
  • ネジ接点の導通確認(テスター測定値:1Ω以下)
  • メッシュや銅箔部の破断・剥離確認

清掃時はアルコールや中性洗剤を使用し、研磨剤は避ける。

最新動向

最新機種では、導電性インク印刷による薄膜パネルが登場している。
これはポリカーボネートやPET基板上に銀ナノ粒子を塗布して形成され、軽量・薄型化が可能である。
さらに、静電容量検知回路と一体化した「機能性導電パネル」も開発が進んでいる。

まとめ

導電体パネルは、遊技機の電子制御において安定動作を支える電気的防護構造である。
ノイズ低減・静電保護・接地安定を実現することで、制御信号の確実な伝達と基板の長寿命化に寄与している。

監修:野口智行(有限会社グローバルスタンダード)
この記事は「技術・構造白書」シリーズの一部として、電装・制御基板領域における導電体パネル技術を専門的に整理したものです。