自主規制とは|業界団体が定める社会的ルールとその意義

自主規制とは

自主規制とは、法律で明文化されていない事項について、業界団体が社会的責任の観点から独自に定める運用基準や制限を指す。パチンコ・パチスロ業界では、日工組(日本遊技機工業組合)、全日遊連(全国遊技業協同組合連合会)、回胴遊商などの団体が中心となり、射幸性の抑制や広告宣伝の適正化、検定制度の補完などを目的に自主的なルールを策定している。これらの規制は法的強制力を持たないが、業界内の共通認識として強い拘束力を持つ。

たとえば、出玉性能やスペックの上限、機種の販売サイクル、撤去時期の目安などは自主規制により運用されている。特に高射幸性機や旧規則機の段階的撤去は、行政指導ではなく業界の合意形成によって進められたものであり、結果的に風営法改正に先行して市場の秩序を整える役割を果たした。

自主規制の運用は、行政との信頼関係にも密接に関わる。警察庁や公安委員会が制度改正を検討する際、業界団体の自主規制状況が考慮されることも多く、実質的には法令運用を補完する“準法的基準”として機能している。これにより、業界は自らリスクを抑制し、行政介入を最小限に抑えることが可能となっている。

近年では、広告・宣伝の表現や遊技環境の健全化、依存防止対策なども自主規制の対象に含まれており、法的枠組みと社会的責任のバランスを取る仕組みとして進化している。自主規制は、法令と市場の間をつなぐ「業界の倫理装置」として不可欠な存在である。