モータートルク制御とは
モータートルク制御(Motor Torque Control)とは、パチンコ・スロット機内部の駆動モーターに対し、負荷変動や動作速度に応じて出力トルクを最適化する制御方式である。
役物・リール・払い出しユニットなど、多様な可動機構において精密な動作と安全性を両立させるために不可欠な技術である。
制御の目的
モータートルク制御の主な目的は以下の通り:
- 回転速度と角加速度の安定化
- 負荷変動による停止・異音防止
- 消費電力の最適化と発熱抑制
- ギア・ベルト機構の耐久性維持
これにより、役物動作のタイミング精度を高めつつ、過剰な応力を防ぐ。
トルク制御の基本原理
モータートルク(T)は電流(I)と磁束(Φ)に比例し、以下の式で表される:
T = k × Φ × I
ここでkはモーター固有定数である。
制御基板はホールセンサーや電流検出抵抗を通じて電流値を取得し、PWM制御により出力電圧を調整してトルクを制御する。
制御方式の分類
| 方式 | 概要 | 特徴 |
|---|---|---|
| 電流制御方式 | 電流フィードバックで出力を安定化 | 低速トルクに優れる |
| 電圧制御方式 | PWMデューティ比で間接的にトルク制御 | 構成が簡易、低コスト |
| ベクトル制御方式 | 三相ベクトル演算によりトルクと磁束を独立制御 | 高精度・高効率・静音化 |
検出センサーとフィードバック
トルク制御には、次の検出素子が関与する:
- ホールセンサー(回転速度・位置検出)
- 電流センサー(トルク推定)
- 温度センサー(過負荷保護)
これらの信号は制御マイコンでA/D変換され、リアルタイムにフィードバック制御へ反映される。
安全制御とフェイルセーフ
過電流・過熱時には出力を即時遮断し、ソフトスタート・ソフトストップ制御で衝撃を抑制する。
遊技機では安全規格により、モーターの誤動作防止とリレー制御による二重遮断構造が義務化されている。
応用例
- リール回転トルクの均一化による図柄停止精度向上
- 役物開閉時のスムーズな動作制御
- 払い出しモーターの過負荷防止
特にリール軸制御では、停止衝撃を抑えつつ回転速度を保つPID制御が採用される。
次世代トルク制御技術
AI学習を用いた自己適応型トルク制御が一部の新型基板で導入されている。
負荷変動データを蓄積し、動作履歴から最適PWM値を自動補正することで、摩耗や経年変化に強い制御が実現している。
まとめ
モータートルク制御は、遊技機における精密動作の心臓部といえる技術である。
安定したトルク制御は動作信頼性と耐久性を大幅に向上させ、演出品質や安全性の両立を支えている。
関連サイト:スリーピース技術ガイド
モータートルク制御や電流制御アルゴリズムの詳細は、グループサイト
スリーピースドットネット(ppps.jp)
の制御基板技術ガイドで紹介しています。