出玉カウンターとは
出玉カウンター(Payout Counter)は、遊技機から払い出された玉数(またはメダル数)を計測・記録する装置である。
主に払出基板に接続され、センサーからの信号をもとにリアルタイムでカウント値を演算し、メイン基板やホールコンピュータへ出玉データを送信する。
ホール経営上の出玉管理、確率統計、検定適合確認に欠かせない装置である。
構成要素
出玉カウンターは大きく以下の構成で成り立つ:
- センサー部(フォトインタラプタまたはホールセンサー)
- 入力処理回路(パルス整形・ノイズ除去)
- カウントICまたはマイコン
- 通信インターフェース(RS-485/UART/独自プロトコル)
- メモリ(累積値保持)
これらが連携して、1球(または1枚)単位で正確にカウントする。
検出方式と信号処理
出玉カウンターでは主に以下の方式が用いられる:
- フォトインタラプタ方式: 赤外線遮断で1パルスを検出。最も一般的。
- ホールセンサー方式: 磁気変化で球通過を検出。耐汚性に優れる。
- ロータリエンコーダ方式: メダルホッパー用。円盤パルスで高精度検出。
信号はノイズ除去用のRCフィルタを通過後、シュミットトリガICでデジタル整形され、カウンタICに入力される。
カウント回路と演算処理
カウンタ回路では、入力パルスをタイムチャートに沿って数値化し、次のようなロジックで動作する:
if (input_pulse == HIGH) then count = count + 1 update_display()end if
メイン制御基板とはUART通信でリンクし、払い出し命令(Start)と完了応答(ACK)を1ms単位でやり取りする。
この双方向通信により、賞球数制御や保留解除などの上位制御と同期を取る。
通信プロトコル
ホールコンピュータとの通信には標準的に「SAS」「RS-485」「自社プロトコル」などが使用される。
1プレイ単位の出玉データや日計カウンタ値が定期的に送信され、売上・稼働データと照合される。
通信エラーを防ぐため、以下の機能が実装されている:
- CRCチェック(誤り検出)
- 再送要求(NACK応答)
- 送受信タイムアウト監視
累積カウンタとバックアップ
出玉カウンターには、停電時でも値を保持するためのバックアップ回路が搭載されている。
多くはEEPROMまたはFRAMを使用し、累積出玉数・払出回数・異常履歴を保持する。
保守時にリセットされる項目と保持項目が区別されており、管理者操作による不正リセットを防ぐための暗号署名が組み込まれている場合もある。
誤カウント防止設計
高速に連続して球が通過する際の誤検出を防ぐため、ハードウェア側で「デバウンス時間」を設定している。
標準的な設定は2〜4msであり、過剰な短縮は二重カウントを引き起こす。
また、電磁ノイズや照明干渉に対しても、シールド線・ツイストペア・フェライトコアを使用して安定化を図る。
整備・点検の要点
出玉カウンターの定期点検では、次の項目が重要である:
- フォトセンサーの清掃と光量測定
- コネクタ接触確認(抜け・腐食防止)
- カウンタICの電圧測定(5V±0.2V)
- 通信ケーブルの波形監視(立ち上がり0.8V/ns以上)
特に玉カスの付着やレンズ曇りは、誤検出の主原因である。
リユース・再整備時の注意
中古機整備では、カウンタ基板の酸化やハンダクラックが多発する。
また、EEPROMの書き換え回数制限(10万回程度)を超過している場合、値保持エラーを起こす可能性があるため、交換が望ましい。
次世代化の動向
近年は「デジタルホールネットワーク化」により、出玉カウンターがEthernet対応化され、リアルタイムでサーバーに送信する仕組みが主流になりつつある。
さらにAI解析を導入し、個体ごとのセンサー応答時間を自動補正する「スマートカウンタ」も登場している。
まとめ
出玉カウンターは、遊技機の物理動作をデジタルデータ化する要の装置であり、
通信安定性・誤検出防止・バックアップ保持の3点を満たすことが信頼稼働の条件である。
電装系保守の中でも、最も実用的な管理項目の一つとして位置づけられる。
関連サイト:スリーピース技術ガイド
出玉カウンターの検出構造・通信方式・バックアップ保持技術の詳細は、グループサイト
スリーピースドットネット(ppps.jp)
の出玉管理技術ガイドで詳しく紹介しています。