賞球数制御とは
賞球数制御(Prize Ball Count Control)とは、遊技機が入賞・当選・特図抽選などの結果に応じて、正確な数量の遊技球(賞球)を払い出すための制御システムを指す。主にメイン制御基板と払出基板の協調によって実現され、遊技の公平性と検定基準遵守の要となる。
制御の基本構造
賞球数制御は以下の要素で構成される:
- メイン基板(抽選・演算部)
- 払出基板(物理駆動・カウント制御)
- 入賞センサー/カウントセンサー
- 通信バス(シリアル/パラレル信号)
メイン基板が当選結果を判断し、「賞球◯個払い出せ」という指令を払出基板へ送信する。払出基板はホールセンサーで実際の球数をカウントし、規定数に達すると駆動を停止する。
演算ロジックと信号フロー
賞球数制御の基本的な信号フローは次の通り:
① 入賞センサー信号をメイン基板が検出 ② 特図または普図の抽選結果を演算 ③ 該当ラウンド/入賞口の賞球数を決定 ④ 払出基板へ払出指令(球数データ)を送信 ⑤ センサーでカウントし、規定数で停止 ⑥ 実績をメイン基板へフィードバック
このシーケンスが数ミリ秒単位で処理され、常に正確な出玉管理が行われる。
賞球数の定義と規制
賞球数は遊技機の検定において厳密に定められている。主に次の基準で設計される:
- ヘソ入賞:3〜5個
- 電チュー入賞:2〜15個(機種による)
- 特図大当たり時:10〜15個×ラウンド数
これらは保通協(型式試験)により動作確認され、1個の誤差でも検定不合格となる場合がある。そのため、賞球数制御はメイン・払出間通信の中でも最も精度が求められる領域である。
通信制御と信号同期
賞球数データは、主にUARTまたはSPI通信で転送される。通信エラー防止のためにCRCチェックとACK応答が組み込まれており、以下の制御が行われる:
- 1回あたりの賞球指令は16ビットデータで送信
- 払出基板は受信後、チェックサムを照合
- 不一致時は再送要求を発行
また、払出完了時にはフィードバック信号をメイン基板に返送し、制御ループを閉じる。
ハードウェア構成と検出方式
賞球数の検出には、ホールセンサーまたはフォトインタラプタが使用される。1球通過ごとにセンサーが信号を発生し、払出基板のマイコンでカウントする。
このカウント信号が通信遅延やノイズで失われると、過払出・不足払いの原因となるため、IC内にデバウンス回路(チャタリング除去)が組み込まれている。
安全・冗長設計
検定制度の厳格さから、賞球数制御には二重安全構造が取られている:
- 二重カウントチェック(センサー+タイマー監視)
- 通信異常時の自動停止
- 電源異常検知によるリセット処理
- 払出基板内のフェールセーフ処理
この仕組みにより、外乱や誤検出が発生しても出玉制御の信頼性を維持できる。
点検・整備要点
賞球数制御系の点検では、以下の確認が推奨される:
- センサーの汚れ・位置ズレ
- 通信ハーネスの接触不良
- 払出基板ICの電圧供給(5V±0.2V)
- メイン⇔払出間のACK応答時間(基準:1ms以内)
過払いや賞球漏れが見られる場合、機械的な詰まりよりも通信遅延が原因であることが多い。
リユース・再整備時の注意
中古機では、ホールセンサーの感度低下や通信ラインのノイズ混入がよく見られる。再整備時はセンサー電圧を測定し、3.3Vまたは5V系で正しく出力しているかを確認する。また、払出制御IC周辺のコンデンサ交換は通信安定化に効果的である。
次世代化と統合制御
新世代機では、賞球制御がメイン基板内のSoCに統合され、物理的な独立基板を廃止する傾向にある。これにより通信遅延が減少し、処理の一元化と検定試験の効率化が進んでいる。
まとめ
賞球数制御は遊技機の「公正性」を技術的に支える中枢システムである。正確なカウント・安定通信・センサー精度の維持が、長期稼働における信頼性の鍵となる。
関連サイト:スリーピース技術ガイド
賞球数制御や払出制御基板の構造・通信技術の詳細は、グループサイト
スリーピースドットネット(ppps.jp)
の出玉制御技術ガイドで詳しく紹介しています。