RT制御とは何か|技術・構造白書

RT制御とは

RT(Reel Time/Replay Time)制御とは、一定ゲーム数のあいだリプレイ確率を上昇させ、
プレイヤーに“継続感”を与えるための制御方式である。
ART(アシストリプレイタイム)と異なり、押し順ナビを用いず自然なリプレイ成立を演出するのが特徴で、
出玉性能を穏やかに維持しつつゲーム性の幅を広げる役割を持つ。

RT制御の基本構造

RT制御は、メイン制御ROM内の「内部状態テーブル」によって構成される。
主な構成要素は以下のとおり:

  • RTモードフラグ(RT_FLAG)
  • ゲーム数カウンタ(RT_COUNT)
  • リプレイ抽選テーブル(TABLE_RT)
  • モード遷移テーブル(ENTRY/EXIT条件)

RT突入時にフラグが立ち、指定ゲーム数が経過するまで特殊抽選テーブルが適用される。

突入条件と終了条件

RTモードは、ボーナス終了後や特定小役入賞時などを契機として突入する。
代表的なパターン:

  • ボーナス終了後(30G固定RT)
  • 特定役(チェリー・スイカ)当選時
  • 内部フラグ抽選によるランダム突入

終了条件は、規定ゲーム数消化またはボーナス当選時。
終了時には内部的にRT_FLAGがリセットされ、通常抽選テーブルへ戻る。

制御アルゴリズム

RT制御の基本アルゴリズムは以下の流れで動作する:

if (RT_FLAG == 1): use TABLE_RT RT_COUNT -= 1 if (RT_COUNT == 0 or BONUS == 1):  RT_FLAG = 0else: use TABLE_NORMAL

このように、RT状態中はリプレイ抽選確率を高く保ちながら、
ボーナス当選または規定ゲーム消化でモードを終了する。

リプレイ確率と出玉設計

RT中のリプレイ確率は通常より高く設定され、
その結果「メダルの減少が抑えられる=実質的な継続状態」が生まれる。
一例を挙げると:

状態リプレイ確率出玉傾向
通常時1/7.3減少
RT中1/2.1〜1/1.6微増〜横ばい

ただし、法的には「ARTとは異なり、押し順指示や変則入賞誘導を行わない」ことが前提条件とされている。

演出制御との連携

RT突入時や終了時には、専用BGMや液晶演出が発動し、プレイヤーに状態変化を視覚的に伝える。
主な連携パターン:

  • RT突入時:背景変化+専用BGM開始
  • RT継続時:背景ループ+リールフラッシュ
  • RT終了時:フェードアウト+通常画面復帰

演出制御はサブ制御基板が担当し、メイン基板からのRTフラグ信号を受けて自動的にモードを切り替える。

制御基板間の通信

RT状態はメイン制御基板が管理し、サブ基板に対して以下のようなコマンドを送信する:

CMD_RT_START (game=30)CMD_RT_UPDATE (count=RT_COUNT)CMD_RT_END

サブ基板側ではこれをトリガーとして、液晶演出・音声ROM・LED制御を統合的に実行する。

法的基準と検定対応

RT制御は「出玉性能を一定に保ちつつ遊技性を拡張する技術」として認可されているが、
次のような法的制約が存在する:

  • リプレイ確率の変動は「内部抽選テーブル切替」に限る。
  • 出玉性能の上限はART同様に240%未満。
  • 押し順指示や特定役強制は不可。

このため、RT制御は技術的にはARTと近いが、
あくまで“自然当選型の時間管理機構”として設計されている。

整備・点検のポイント

中古整備時には、RTカウンタのリセット確認およびテストモード動作をチェックする。
特に以下の項目を確認する:

  • RT_FLAG初期化確認(電源再投入時)
  • RT残ゲーム数カウント動作
  • ボーナス突入時のRT解除タイミング
  • 液晶背景遷移の同期(通信ラグ有無)

RT制御異常があると遊技バランスに影響するため、
ソフトウェアCRCチェックの実施も推奨される。

次世代化の方向性

新しい機種では、RTを演出的に多層化した「RT連鎖構造」が導入されつつある。
例えば、「ステージRT→チャンスRT→高確RT」といった階層を用い、
プレイヤーに段階的な緊張感を与える構造である。
これにより、短期出玉制御と演出の一体化が進んでいる。

まとめ

RT制御は、パチスロ機のソフトウェア構造の中で「時間による遊技バランス」を司る技術である。
リプレイ確率制御・演出同期・モード管理が緻密に組み合わさることで、
ARTに頼らない自然なゲーム性を実現している。

監修:野口智行(有限会社グローバルスタンダード)
この記事は「技術・構造白書」シリーズの一部として、遊技プログラム・ソフトウェア領域におけるRT制御技術を専門的に整理したものです。