軸受グリス粘度とは何か|技術・構造白書

軸受グリス粘度とは

軸受グリス粘度(Bearing Grease Viscosity)とは、リール・役物・モーター軸などの回転部に使用される潤滑グリスの流動特性を示す指標である。
適切な粘度選定は、摩擦損失・耐久性・動作音に大きく影響し、遊技機の寿命と性能を左右する重要要素である。

粘度の基本と意味

粘度(Viscosity)とは、潤滑剤の内部摩擦抵抗を表す物性値で、単位はPa・sまたはcSt(センチストークス)で表される。
高粘度グリスは密着性と耐荷重性に優れる一方、低粘度グリスは軽快な動作と低トルク化に向く。

グリスの構成要素

  • 基油(鉱油・合成油・エステル油)
  • 増ちょう剤(リチウム石けん・ウレア・ポリウレアなど)
  • 添加剤(防錆・酸化防止・摩耗防止剤)

これらの配合比により、粘度・耐熱性・酸化安定性が決定される。

遊技機における適正粘度範囲

使用箇所推奨粘度特徴
リール軸受部70〜120 cSt起動抵抗と静粛性のバランス
モーターギア部150〜220 cStトルク伝達安定・摩耗防止
スライドレール・リンク機構90〜130 cSt動作応答性と密着性の両立

グリスの選定は、回転速度(rpm)、負荷トルク、温度条件によって微調整される。

温度依存性と粘度指数

粘度は温度上昇とともに低下するため、潤滑特性を安定化させるには「粘度指数(VI:Viscosity Index)」の高いグリスが有効である。
VI値が高いほど温度変化に対する粘度変動が少なく、長期安定運転が可能となる。

劣化と交換基準

  • 色調変化(透明→褐色・黒化)
  • 粘度低下による軸鳴り・異音発生
  • グリスの分離・油滲み
  • 異常トルク・過熱の兆候

上記の兆候が確認された場合、軸受を清掃後に新グリスを充填する。
定期交換目安は稼働3,000〜5,000時間または2年ごとが基準とされる。

最新のグリス技術

近年では、フッ素系合成油やナノ粒子添加剤を用いた高耐久グリスが登場している。
これらは高温環境下でも酸化しにくく、長期にわたり粘度を維持する特性を持つ。
また、静電気帯電を抑える導電性グリスも開発されており、電子制御部との共存性を高めている。

まとめ

軸受グリス粘度の管理は、遊技機の精密動作と耐久信頼性を維持するための基本である。
適正な粘度と交換周期を守ることで、摩耗・発熱・異音などのトラブルを防止し、機械寿命を大幅に延ばすことができる。

監修:野口智行(有限会社グローバルスタンダード)
この記事は「技術・構造白書」シリーズの一部として、役物・筐体構造領域における軸受潤滑管理技術を専門的に整理したものです。