メダルホッパーとは何か|技術・構造白書

メダルホッパーとは

メダルホッパー(Medal Hopper)は、パチスロ機やメダル式遊技機で使用されるメダル排出装置であり、出玉を一定速度でプレイヤーへ払い出すための機構である。メダルを収納・送り出す役割を持ち、出玉制御の物理的中枢を成す。パチンコ機における払出ユニットに相当する装置である。

構造と主要部品

メダルホッパーは、以下の構成要素からなる:

  • ホッパーボウル(メダル貯留皿)
  • 回転ディスク(ディスペンサーディスク)
  • ディスクモーター(DCまたはステッピングモーター)
  • メダル検知センサー(フォトセンサー)
  • 排出口ガイド・配管部

ホッパーボウル内に貯められたメダルは、ディスクの回転によって1枚ずつ取り出され、排出口を経由してプレイヤー側に払い出される。

動作原理

ホッパーモーターが回転すると、ディスクの周囲に設けられたスリットにメダルが1枚ずつ引き込まれる。ディスクが1回転する間に、複数枚のメダルが順次排出される。排出口を通過する際に、フォトセンサーが通過メダルを検知し、払出基板がカウントを行う。

目標払い出し数に達すると、メイン基板がモーター停止信号を送出し、動作が停止する。これにより、出玉制御と連動した正確な払い出しが実現されている。

検知・制御回路

メダル検知センサーは、赤外線LEDと受光フォトトランジスタの組み合わせによる遮光検知方式を採用する。1枚通過ごとにパルス信号を生成し、払出制御ICがカウント処理を行う。信号はデジタル変換され、メイン制御ROM側で出玉管理データとして記録される。

一部の高精度モデルでは、2重センサー構成を採用し、2点検知によってメダルの厚みや通過速度を同時に確認して誤作動を防いでいる。

安全設計と異常検知

ホッパーには以下の安全・検知機能が組み込まれている:

  • モーター過電流検知(過負荷停止)
  • センサー異常検出(通過信号断続)
  • 満杯検知スイッチ(オーバーフロー防止)
  • モーター回転検出(ロータリエンコーダ監視)

これらの監視信号は払出制御基板を経由してメイン基板に送られ、異常が発生した際はエラーコード表示や動作停止で対応する。これにより安全性と信頼性が確保されている。

素材・耐久設計

ホッパーディスクはABS樹脂またはナイロン樹脂製で、メダルとの摩擦を抑えるためにテフロンコーティングが施される。モーター軸受にはボールベアリングを採用し、長期運転時の回転精度を維持する設計がなされている。ディスク寿命は通常50万〜100万回転を想定している。

メンテナンス・整備

メダルホッパーの整備では、ディスク清掃とセンサー確認が重要である。油分や埃が溜まるとメダルの滑りが悪化し、二重排出や詰まりの原因となる。定期的にエアブローでホッパー内部を清掃し、必要に応じてシリコン系潤滑剤を少量塗布する。

モーターの動作確認は、通電テストで回転数と電流値を測定し、規定値(約0.3〜0.5A)を超える場合はギア摩耗またはベアリング劣化を疑う。異音や振動がある場合は、早期交換が推奨される。

リユース・交換対応

中古機整備では、ホッパーの変形やセンサー誤検知が多く発生する。交換時は同一型番または互換認定済みモデルを使用し、排出口位置と信号ピン配列の一致を確認する必要がある。ホッパー容量の違いにより、排出速度やタイミングが変化するため、テストモードで必ず動作確認を行う。

まとめ

メダルホッパーは、メカ構造・電装制御・センサー技術が融合した高精度ユニットであり、出玉制御の信頼性を左右する中核装置である。安定稼働を維持するためには、定期的な清掃・回転チェック・センサー点検が不可欠である。

監修:野口智行(有限会社グローバルスタンダード)
この記事は「技術・構造白書」シリーズの一部として、役物・筐体構造領域におけるメダル供給・排出装置の技術を専門的に整理したものです。