風圧センサーとは何か|技術・構造白書

風圧センサーとは

風圧センサー(Air Pressure Sensor)は、パチンコ機やパチスロ機の筐体内部に設置され、ファン・送風ユニット・空気流の変化を検出するための圧力検知デバイスである。
主に演出・安全制御・冷却モニタリングの3つの目的で使用される。

近年では、可動役物の動作や風流演出と連動して、プレイヤーの体感を高める装置としての役割も大きくなっている。

構造と検出原理

風圧センサーは、微小な圧力変化を電気信号に変換する素子を内蔵している。
代表的な方式は次の通り:

  • ピエゾ抵抗型: ダイアフラムの歪みを抵抗値の変化として検出。
  • 静電容量型: 圧力による電極間距離変化を静電容量の差で検出。
  • 熱線流量型: 空気流による温度変化を熱抵抗で測定。

これらの方式はそれぞれ特性が異なり、冷却監視には熱線流量型、演出用にはピエゾ型が主流である。

遊技機における設置位置と用途

風圧センサーは、用途に応じて次のように設置される:

  • 送風演出ユニット(役物下部または盤面背面)
  • 電源ユニット・CPU周辺(冷却風量モニタリング)
  • 可動役物周囲(風量演出との同期制御)

演出タイプでは、リーチ中の風演出・確変突入時の送風などに連動して、出力信号をメイン制御基板へフィードバックする構造になっている。

出力信号と制御系統

風圧センサーの出力は、通常0〜5Vのアナログ電圧信号として制御基板に入力される。
基板側ではA/Dコンバータでデジタル化し、風量レベルを演出制御や冷却制御に反映する。

代表的な信号処理は以下のように構成される:

[風圧検知] → [A/D変換] → [閾値比較回路] → [演出・冷却制御出力]

閾値を超える風圧を検知した場合、CPUは「風演出強」「冷却風異常」などのフラグを立てて動作を制御する。

冷却監視としての役割

風圧センサーは単なる演出デバイスに留まらず、冷却ファンや送風経路の監視にも利用されている。
特にメイン基板・電源トランス周辺の温度上昇を防ぐ目的で、一定風量を検知できない場合に警告フラグを出す設計が一般的である。

この場合、制御基板のファン制御ICが連動し、必要に応じて停止・再起動処理を行う。

演出制御との連携

風圧センサー信号は、演出制御基板(液晶・ランプ制御)と同期して活用される。
例えば、風圧値が一定以上になると「強風演出」や「風量サウンド」が同時に発動するなど、
体感演出の一貫として統合制御が行われる。

この連携は、通信制御ICを介したコマンド構造で実装され、誤差や遅延を防ぐためにCRCチェックが施されている。

メンテナンスと校正

風圧センサーは経年により出力ドリフト(ゼロ点ずれ)が発生する。
定期的に校正を行うことで、正確な圧力検知を維持できる。
校正手順の例:

  1. 電源投入後、無風状態で基準電圧(通常2.5V)を確認。
  2. 基準圧(例:10Pa)を加え、電圧上昇値を測定。
  3. 偏差が±5%を超える場合は交換または補正。

また、ダスト付着やファンの回転不良による誤検知も多いため、清掃と風路確認も同時に実施する。

リユース・再整備時の注意

中古機では、風圧センサー内部のダイアフラムが経年硬化して感度が低下している場合がある。
応答遅延やノイズ出力が発生した場合は新品交換が推奨される。
また、再整備時にはメイン基板とのアナログ接地が確実に取れているかを確認する。

次世代技術動向

新型センサーでは、MEMS技術を用いた極小圧力センサーが登場し、より高感度・低消費電力化が進んでいる。
さらに、Bluetooth通信を用いたワイヤレス風圧モニタリングも試験的に採用されつつある。

これにより、可動演出の自動補正やファン制御のフィードバック最適化が可能となる見込みである。

まとめ

風圧センサーは、遊技機内部の「空気の流れ」を検知・制御する重要デバイスであり、
演出効果と安全制御の両面を支える存在である。
定期的な校正と清掃により、安定した検出性能を維持することが求められる。

監修:野口智行(有限会社グローバルスタンダード)
この記事は「技術・構造白書」シリーズの一部として、役物・筐体構造領域における風圧検知技術を専門的に整理したものです。