発射ユニットとは
発射ユニット(Ball Firing Unit)は、パチンコ機で遊技球を一定の速度と角度で発射するための機構である。ハンドル操作やオート発射装置の信号を受け、発射レバーやモーターを駆動して球を射出する。発射ユニットの性能は遊技テンポや球の軌道安定性に直結し、機構設計上の重要部位である。
構造と動作原理
基本構造は、発射レバー・バネ・クラッチギア・発射ハンマー・射出口ガイドから成る。プレイヤーがハンドルを回すと、スプリングが圧縮され、解放時にハンマーが球を押し出す。最近の機種では、DCモーターとギア機構による電動式発射ユニットが主流となっており、モーター回転数を制御して球速を安定させている。
球の射出速度は平均約3.5〜4.0m/sで、発射角度は5〜7度に設計される。角度と初速の微調整により、スタートチャッカーや風車付近への到達率を最適化している。
発射制御方式
発射ユニットには2つの制御方式が存在する:
- 機械式発射: ハンドル回転でバネを圧縮し、解放時に球を発射する。古典的でメンテナンス性が高い。
- 電動発射: モーター駆動により一定トルクで球を押し出す。最近ではPWM制御(Pulse Width Modulation)により速度制御精度が向上している。
モーター式では、電流センサーで負荷を検知し、球詰まりや空転を自動的に防ぐ設計が採用されている。
主要構成部品
- 発射モーター(ブラシ付きまたはブラシレス)
- ギアユニット(減速機構)
- 射出アーム/ハンマー部
- 発射レバーまたはオート発射トリガー
- 球送りスクリューおよびホッパー接続部
これらの部品は射出精度と耐久性を両立するために樹脂+金属ハイブリッド構造が多く、長期稼働に耐えるように設計されている。
安全設計と保護機構
発射ユニットは高速で可動するため、安全設計が厳重に行われている。球詰まり検知スイッチ・過電流保護回路・モーター温度センサーを備え、異常時には自動停止する仕組みとなっている。さらに、球の供給部には指挟み防止のためのカバーガイドが設けられている。
発射口付近の樹脂パーツは耐摩耗性ポリカーボネートを採用し、摩耗や変形による球速低下を防止している。
メンテナンスと整備
長期使用によって発射トルク低下・ノイズ増加・射出不良が発生する場合がある。整備時には以下の点検を行う:
- モーター電流値と発射速度の測定(規定値±10%以内)
- ギア部グリスの再塗布(シリコン系低粘度)
- ハンマー摩耗・バネ変形の確認
- 球通路の清掃と静電防止処理
電動タイプでは、モーターブラシや配線ハーネスの接触抵抗を確認することで、発射安定性を保てる。
リユース・交換時の注意
中古機整備では、発射ユニットが最も故障率の高い部位の一つである。リユース時には必ず動作試験を行い、トルクや球速に異常がないかを確認する。純正型番以外の互換ユニットを使用する場合は、発射角と軸位置の誤差に注意が必要である。
まとめ
発射ユニットは、パチンコ機の“心臓部”とも言える物理駆動装置である。精密な角度設計と電動制御技術により、遊技の安定性と再現性を支えている。機械的要素と電子制御が融合した代表的モジュールであり、整備技術の熟練度が求められる領域である。
関連サイト:スリーピース技術ガイド
発射ユニットの調整・交換・電動制御メンテナンスについては、グループサイト
スリーピースドットネット(ppps.jp)
の整備・筐体技術ガイドで詳しく紹介しています。