コインフォール構造とは何か|技術・構造白書

コインフォール構造とは

コインフォール構造(Coin Fall Mechanism)とは、スロット機やメダル遊技機において、払い出されたメダルが自然落下し、トレイや回収ボックスへ導かれる経路構造を指す。
滑落角度・材質・衝撃吸収設計などにより、静音性・スムーズな流下・メダル損傷防止を実現する。

基本構造

コインフォール構造は、以下の主要要素で構成される:

  • フォールシュート(メダル落下ガイド樋)
  • スロープ板(傾斜誘導面)
  • 衝撃吸収プレート(ゴム・樹脂製)
  • ノイズリダクションスポンジ
  • 回収トレイ/リジェクトボックス接続口

メダルはホッパー出口から重力により流下し、シュートを通過してトレイへ到達する。

落下角度と設計基準

落下経路は、滑り抵抗と衝撃エネルギーを最適化するよう設計される。
一般的な傾斜角度は30〜40°で、摩擦係数μ=0.25前後の樹脂素材が用いられる。
角度が浅すぎると詰まり、急すぎると跳ね返りが発生するため、材質と傾斜の調整が重要である。

防音・耐久設計

メダル落下音の低減は遊技環境の快適性に直結する。
そのため、以下の防音設計が採用される:

  • 衝撃吸収素材(EPDM/シリコンフォーム)貼付
  • 段差緩衝構造(ステップ構造を廃止し曲面化)
  • 金属樹脂ハイブリッドによる共振抑制
  • トレイ受け部にフェルト材敷設

耐久試験は10万回以上のメダル通過を基準として行われる。

メンテナンスと清掃

コインフォール経路はメダル粉・ホコリが蓄積しやすく、滑り抵抗や静電付着の原因となる。
定期清掃時には以下の手順を行う:

  1. トレイ・カバーを外し、経路全体をエアブロー。
  2. 樹脂面を乾拭きし、汚れがひどい場合は中性洗剤を使用。
  3. 衝撃吸収材の剥がれ・劣化を確認。
  4. 異物混入や段差の有無を目視点検。

潤滑剤の使用は厳禁であり、静電付着防止スプレーが推奨される。

改良・カスタマイズ技術

ホールや設置環境によっては、メダルの跳ね返りや飛散を防ぐために透明アクリル製ガイドカバーを後付けする場合がある。
また、近年ではLED照明を組み込んだ「イルミネーションフォール」構造が採用され、視覚演出と防音性を両立している。

最新動向

新型機では、メダル落下を光学センサーで検知し、払い出し制御と同期させる「フォールカウント構造」が登場。
これにより、落下中のメダル数をリアルタイムで監視でき、ホッパー制御の精度がさらに向上している。

まとめ

コインフォール構造は、メダルの物理的流れと演出効果を両立させる重要設計要素である。
精密な角度設定と防音設計により、信頼性・静粛性・美観を兼ね備えた遊技体験を支えている。

監修:野口智行(有限会社グローバルスタンダード)
この記事は「技術・構造白書」シリーズの一部として、役物・筐体構造領域におけるコインフォール設計技術を専門的に整理したものです。