クランク機構とは
クランク機構(Crank Mechanism)は、回転運動を往復運動または揺動運動に変換するための基本的な機械構造である。
パチンコ機やパチスロ機では、役物の開閉・上下動・スライド動作など、直線的な動きを演出するための駆動構造として幅広く採用されている。
特に「開閉扉型役物」や「スイングギミック」などでは、コンパクトな構成で滑らかな動作を実現できる点が評価されている。
基本構造と原理
クランク機構は、主に以下の要素で構成される:
- クランク軸(回転入力部)
- コンロッド(連結棒)
- スライダーまたはアーム(出力部)
- 回転駆動源(モーターまたはソレノイド)
モーター軸に取り付けたクランクプレートの回転運動を、コンロッドを介してスライダーに伝え、往復動へ変換する。
回転角度を変えることで、ストローク(可動範囲)や速度特性を自由に調整できる点が特徴である。
遊技機での主な使用例
クランク機構は、次のような可動役物に多用されている:
- 開閉扉式ギミック(例:Vチャレンジゲート、シャッター演出)
- 跳ね上げ式役物(リーチ中のアクションパネル)
- 上下往復動(ハンマー型・回転体連動型)
- 連続スイングギミック(周期動作によるエフェクト)
これらは主に「ステップモーター+クランクプレート構成」で駆動され、静音かつ高精度な可動演出を実現している。
機構特性と運動方程式
クランク機構の運動は三角関数的に表現され、角速度ωの入力に対してスライダーの変位xは以下で表される:
x = r × cosθ + √(l² - (r × sinθ)²)
ここで、rはクランク半径、lはコンロッド長、θはクランク角度である。
この非線形特性により、往復運動の加速度が中央付近で最大化し、
演出における“動きの強弱”を自然に表現できる。
機械的制約と設計上の工夫
小型筐体内では、クランク機構の取り付けスペースが限られるため、
プレート形状を偏心タイプや折り返しリンク式にするなどの工夫が行われる。
また、応力集中を防ぐため、リンク接合部にはブッシュやボールジョイントが用いられる。
摩擦低減にはPOM(ポリアセタール)や真鍮スリーブが使用され、
長期使用における異音やガタつきを抑制する設計が一般的である。
駆動制御とセンサー連携
クランク機構の動作範囲を制御するために、
回転軸の角度をフォトセンサーやホールセンサーで検出し、制御基板が回転範囲を制限する。
異常トルクや停止位置のズレを検知した場合、モーター停止命令を出してギア破損を防ぐ。
また、エンコーダ連動制御を行う機種では、角度分解能を0.9°〜1.8°単位で精密制御できる。
整備・点検のポイント
クランク機構の定期点検では、以下の項目を確認する:
- リンク部の緩み・摩耗
- 回転軸の偏心・変形
- 潤滑油(グリス)の劣化
- ストロークの対称性(左右差)
異音が発生する場合は、コンロッド端部の摩耗やシャフトの歪みが主な原因である。
整備時はシリコングリスを薄く塗布し、過剰な塗布は粘着抵抗を生むため避ける。
リユース・再整備時の注意
中古再整備時には、クランクプレートや軸受の摩耗が進行している場合が多く、
ガタつきや停止位置のズレが発生する。これを放置すると可動干渉や破損に繋がるため、
プレート・ロッド・軸受の3点をセット交換するのが望ましい。
次世代化の傾向
近年は、クランク機構の代替として「カム+リンク複合構造」や「リニアアクチュエータ方式」が一部で採用されている。
これにより可動範囲を柔軟に制御でき、耐久性と静粛性がさらに向上している。
まとめ
クランク機構は、遊技機の「動的表現」を支える基本機構であり、
少ないスペースで複雑な動きを生み出す汎用性の高いメカニズムである。
定期的な清掃とリンク部の点検により、滑らかな動作を長期間維持できる。
関連サイト:スリーピース技術ガイド
クランク機構の構造・整備手順・リンク調整法については、グループサイト
スリーピースドットネット(ppps.jp)
の可動機構技術ガイドで詳しく紹介しています。