固定ボルト規格とは何か|技術・構造白書

固定ボルト規格とは

固定ボルト規格(Mounting Bolt Standard)とは、パチンコ・スロット機の筐体や遊技盤、ユニット、ブラケットなどを確実に固定するためのボルト寸法・強度・ねじピッチ・締結トルクなどを規定した設計基準である。
安全性・耐震性・整備性を満たすうえで最も基本的かつ重要な機械要素の一つである。

主な用途と取付箇所

固定ボルトは遊技機の各部で使用され、以下のように分類される:

  • 筐体固定:ホール設置ブラケット、背面プレート取付
  • 遊技盤固定:盤面ユニット・液晶フレームの装着
  • 電装ユニット固定:基板・トランス・冷却ファンなど
  • 役物固定:駆動モーター・ギアベース取付

これらの部位ごとに材質・強度区分が異なる。

材質と強度区分

材質代表規格強度区分用途
炭素鋼(SCM・S45C)JIS B 11808.8〜10.9主要固定・高荷重部
ステンレス(SUS304)JIS B 1186A2-70腐食環境・外装部
アルミ合金JIS H 4000軽量ユニット固定

強度区分8.8級は引張強さ800MPa、降伏点640MPaに相当する。

ねじ寸法とピッチ

遊技機では、主に以下のメートルねじ規格が用いられる:

  • M3(ピッチ0.5) … 基板・ファン固定用
  • M4(ピッチ0.7) … モーター・センサー固定用
  • M5(ピッチ0.8) … ブラケット・筐体取付用
  • M6(ピッチ1.0) … 島設備・筐体連結部

取付トルクは締結部材の材質・座面処理により設定される。

締結トルクの標準値

ねじ径強度区分標準締付トルク(N·m)
M38.81.1〜1.4
M48.82.4〜3.0
M58.84.5〜5.5
M68.87.5〜9.0

過大トルクはねじ破断や座面損傷の原因となるため、トルクレンチで管理される。

表面処理と防錆対策

ボルトの耐久性向上のため、以下の表面処理が施される:

  • 三価クロメート処理(RoHS対応・防錆)
  • ニッケルメッキ(耐腐食・外観用途)
  • 黒染め(反射防止・内部用途)
  • ジオメットコーティング(重防錆仕様)

湿度や塩害環境下では、防錆剤塗布またはステンレスボルトへの置換が推奨される。

緩み止め構造

振動の多い環境におけるボルトの緩み防止には以下の方法が用いられる:

  • スプリングワッシャ・ナイロンナット併用
  • ねじロック剤(低強度タイプ)塗布
  • 二重ナット構造または座金付きボルト
  • 防振ゴム座の使用(振動吸収+摩擦増加)

重要部は耐振構造設計図に基づき二重ロックが義務付けられる。

最新動向

近年では、組立効率化のため「トルク検知電動ドライバ」や「締結履歴トレーサビリティ管理」が導入されており、
組立時のトルク値を自動記録して品質保証データとして保存する方式が普及している。

まとめ

固定ボルト規格は、筐体構造の信頼性を根幹から支える設計基準である。
適正な材質・トルク管理・防錆処理により、長期稼働時の安全性と整備効率が確保される。

監修:野口智行(有限会社グローバルスタンダード)
この記事は「技術・構造白書」シリーズの一部として、役物・筐体構造領域における固定ボルト設計技術を専門的に整理したものです。