オーバーフロー防止機構とは何か|技術・構造白書

オーバーフロー防止機構とは

オーバーフロー防止機構(Overflow Prevention Mechanism)は、パチンコ機内部で遊技球が過剰に溜まったり、循環経路で滞留・詰まりを起こすことを防ぐ安全装置である。主に球供給ホッパー・払出ユニット・循環タンクに組み込まれ、球量センサーや機構弁によって過剰供給を防止する。

構造と配置

この機構は、遊技球が循環タンクからホッパーや発射経路へ送られる途中に設けられている。物理的な構成は以下の3要素から成る:

  • ボールセンサー(フォトセンサーまたはリミットスイッチ)
  • ボールシャッター(回転式またはスライド式)
  • オーバーフローガイド(余剰球排出路)

球が設定量を超えるとセンサーが作動し、モーターやソレノイドを介して供給シャッターを閉じる仕組みになっている。

動作原理

一般的な電動タイプのオーバーフロー防止機構では、ホッパー内部の光センサーが球量を常時監視している。センサーが一定量以上の球を検知すると、制御基板が信号を出して払出モーターを停止、またはシャッターを閉鎖する。逆に、球量が減少すると自動的に再開する。

この制御は「ヒステリシス制御」と呼ばれ、過剰なオン・オフ動作を防ぎながら安定供給を実現している。

安全設計とフェイルセーフ

オーバーフロー防止機構は、遊技中の異常球詰まりを防ぐだけでなく、モーターの焼損やセンサー故障からも機体を守る。フェイルセーフ設計として、センサー異常時には強制停止モードに移行し、物理的なオーバーフローを防止する。球の供給経路には必ず「逃げ経路(排出口)」が設けられ、過剰な圧力や滞留を逃す構造になっている。

近年では、タンク圧センサーや電流監視によって球流量を間接的に検知する方式も採用されている。

素材と構造耐久性

オーバーフロー部の構造材には、耐摩耗性の高いABS樹脂やポリカーボネートが用いられ、球の衝突や摩擦に耐えるように設計されている。シャッター部は金属ピンとスプリングを組み合わせ、長期間の開閉動作でも変形しにくい構造を採用している。

また、球がセンサー部を誤って反射させないように、マットブラック仕上げや遮光カバーが設けられている。

点検・整備・異常検知

定期点検では、センサー反応・モーター作動・シャッター開閉を確認する。ホッパー内の埃や油膜によって光センサーが誤検知するケースが多いため、無水アルコールでの清掃が推奨される。機構が作動しない場合、センサー断線・基板リレー不良・配線コネクタ抜けなどが考えられる。

また、リユース機整備ではホッパーの形状が旧型と異なることがあるため、オーバーフロー位置を再調整してから動作確認を行う必要がある。

進化と今後の方向性

近年の機種では、物理的シャッターに代わり、モーター回転数制御で球量を間接的に調整する「電子式フィードバック制御」が増えている。AI制御ホッパーでは、遊技状況や出玉速度を解析して最適供給量をリアルタイムで調整する試みも始まっている。

まとめ

オーバーフロー防止機構は、パチンコ機の安定稼働と安全性を支える重要な保護装置である。球供給の流量制御と安全遮断の2機能を兼ね備え、長時間稼働でもトラブルを防ぐよう設計されている。整備・点検の確実な実施が、遊技機の寿命延長と信頼性維持につながる。

監修:野口智行(有限会社グローバルスタンダード)
この記事は「技術・構造白書」シリーズの一部として、役物・筐体構造領域における循環安全機構の設計と制御技術を専門的に整理したものです。